こぎん刺しに使う布
こぎん刺しに使う布 は、平織りの布が一般的です。
平織で布目が拾える程度に粗い布組織なら、どんな布も使用できます。こぎん刺しの起源が藍染の麻布に木綿糸で模様を刺していたことから、伝統的なスタイルとして麻の平織布の使用を好まれる傾向があります。
しかし、麻布は布組織が不均一な場合が多く、模様を刺す際に数える布の経糸の太さが極端に不揃いで数えにくい難点があります。その点で、木綿の布、特に容易に手に入りやすいコングレスという刺繍用の綿布は布組織が均一で布目が数えやすく、比較的お手頃価格な点でも愛用者が多い布です。
こぎん刺し専用につくられた布があります。模様が少し縦長になるように布の緯糸の打ち込みが少なくなっています。メーカーはいくつかありますが、大体が布目を数えやすい布密度になっており、1㎝四方あたり経糸8~9目x緯糸6~8目になります。
上の画像は今と昔のこぎん布の組織密度を比較したものです。左のベージュが現在市販されている、こぎん刺し専用の麻布。右側は明治初期ごろの着物に仕立てられたこぎん刺し。布は麻です。布密度は1㎝四方あたり経糸13〜16目x緯糸10〜13目です。現代の布は昔の布を約2倍拡大した布密度になります。
ちなみに、こぎん刺しの模様は、布目に忠実に構成されていて、1つのモチーフの菱形はタテ・ヨコの目数は同数になります。(詳しくはこちら)機械で織る一般的な平織の布は、経糸に対し緯糸も同数になるので、こぎん刺しの菱形は正方形になります。しかし、昔の着物は、手織りのため緯糸の打ち込み具合は織機を操る人の手によってばらつきがあり、経糸に対して緯糸の打ち込み数が少ない傾向にあります。そのため模様の菱形は縦長なものが多いです。現代のこぎん刺し用の布は、昔の手織りの布により自ずと生じた縦に伸びた模様の美しさに倣っているようです。
〜布に関する過去の記事〜