小さなモドコで こぎん模様 を考える
kogonbankでは2月に、ハリノヲトの植木友子さんに講師をお願いし、こぎん刺しのリモートワークショップを開催しました。
このワークショップは、昨年のクラウドファンディングの返礼品として開催したもので、植木さんの書籍『こぎん刺し連続模様図案集88』を使いこなして、こぎん刺しをもっと自由に楽しめるコツをいろいろ教えていただきました。
その中で、連続した こぎん模様 をスイスイ刺せるようになるコツとして教えてくれたポイントの1つが
”図案のどこを刺しているのかを意識する”ことでした。
例えば、シンプルに1つのモドコ(モチーフ)を配列する模様の中で、針はモドコを刺しているのか、モドコとモドコの間を通っているのかを意識すると、自ずと次の針の進め方が見えてきます。こぎん刺しの模様は上下段で1目ずつずれて模様が構成されているので、模様の全体像を把握することで、前段の流れに沿って針を動かして行くことができるのです。
私たちがこれまで初めての人たちとワークショップを行う中でも、図案の目数に意識が集中してしまうがために、模様がズレていることに気づかないまま、やり直しができないところまで進んでしまったり、図案の目を数えるところで疲労困憊してしまい、こぎん刺しは難しいと感じられる方がいらっしゃいます。
しかし、図案のどこを刺しているのかを意識することができたら、こぎん刺しの基礎的な小さいモチーフの並べ替えだけでもオリジナルな連続模様をつくることができます。
小さなモドコを並べてみよう
これから紹介するのは、何気なく布と糸の色合わせを確認したくて、とりあえず何か模様を刺したかったところから始めたら、今まで作ったことがない模様ができたという話です。図案を見なくても作れるモドコを使って布を埋めようということで、五筋上げの豆コを布に並べてみることから始まります。
連続イメージはこんな感じ。モドコの感覚は3目あけて並べます。
ルールを決める
ただただ思うままに針を動かしていくと、収集がつかなくなるので針を進めるルールを決めました。
①モドコとモドコの間は3目あける。
②モドコは中心軸で上下左右対称の模様にする。
凝ったモドコを使わず小さなシンプルなモドコをチョイスすることで針の進行を妨げる迷いをなくす。
③1・3・5しか数えない!
こぎん刺しの特徴は布目を奇数目(1・3・5目)拾って構成する模様。奇数は無限にありますが、最大5目で抑えます。
④前後段で1目図ずつズラして模様を作る。
⑤モドコを並べるだけ!
こぎん刺しの大きな連続模様には、モドコを縁取るような枠模様や、モドコとモドコの隙間を埋めるような畔模様もありますが、難しいので考えません。
布に模様を刺していく
実際には前もって図案を描くことなく、一発勝負で布に挑みましたが、ここからの模様が出来上がる経緯は図で紹介します。
こぎん刺しは、着物の布を作る技術だったので基本的にはモドコ(モチーフ)を1つずつ刺し仕上げるのではなく、模様全体を1段ずつ積み上げるように横に横に針を動かしていきます。
私は五筋上げの豆コを横に1段並べていく途中で、このままひたすら同じ模様を続け行くのは辛い予感がしました。そこで2段目の模様は五筋上げ豆の目立て(横幅が最も広い段)の1段前で切り返し、一回り小さい三筋上げ豆に変更することにしました(①)。この時点で次の展開をどうしたらいいのか、創造していませんでしたが、1・3・5しか数えない!の決意のもと針を進めます。
2列のパターンを交互に
模様が2段刺しあがると、模様の列が見えてきます。
列1の三筋上げ豆と、列2の五筋上げ豆の列です。
ここで菱刺しに見る色分けを思い出しました。
菱刺しは偶数目で模様を構成するので、モチーフの菱形が横長になるのがこぎん刺しと違う特徴です。菱刺しでは布に並んだモチーフ(型コ)を縦列ごとに色を変えて刺すことで、市松模様のようなカラフルさを表現できます。このことをヒントに、縦列ごとに模様パターンを決めて行こうと考えました。
ひとまず、列1は三筋上げ豆だけを繋げていくことにします。
豆だらけに変化をいれて こぎん模様 にする
豆コばかり並ぶのもつまらないので、五筋上げ豆列は何か変化がほしいなぁ。。。と考えながら五筋上げ豆を刺しはじめ、3段目の5目を刺しきったところで、次の段を3目に戻してみました(③)。そうすると、ここに現れるモドコは五筋のカチャラズしかありません。
その後、三筋上げ豆まで5目あきます。ここに1目や3目を入れると、モドコ間は3目あけるルールに反するのでここはとりあえず5目あけて進めてみます(④)。
次の段に上がり、どうなるかわからないけどルールにのっとって、五筋のカチャラズの先端の1目の前後に3目あけて1目配置してみます(⑤⑥)。次に右に並ぶ三筋上げ豆の中心を軸に左右対称で、5目あけた後に1目入れて繰り返し進みます。
更に次の段に上がり、五筋上げ豆と同じ目立てサイズで模様を構成することを考えると、この段は目立てになります。1目の次は3目が常套。3目が目立てのモドコとなると、三筋のカチャラズ。これを二つ並べることしか思いつきませんでした(⑦)。
そして2種類のカチャラズを並べた目立て【11】のモチーフが完成し、列2は2種類のモチーフを交互に配置するパターンになり、2列を交互に配置していく連続模様の出来上がりです。
実際に刺した布がこちらです。
このような小さいモチーフを組み合わせた連続模様はなかなか便利で、どこの段で刺し止めても様になるので、模様を刺し止める区切りのいいタイミングを自由に決めて使えます。
小さくてシンプルなモドコは単独で使うと単調になりがちですが、大きさが違うものを組み合わせて並びを考えるだけで素敵なパターンが生まれます。布の上でゲームをする感覚で針を動かしてみるのもドキドキがあって面白かったです。
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今回作った図案は、4月27~29日に開催のホビーショーでのワークショップでご利用いただけます。初めての方や手芸に苦手意識のある方には、針を進めながら模様の大きさを決めていけるのでお勧めの図案です。ぜひワークショップで体験してみてください。