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無心になる こぎん 刺し

2023.11.23


9月にkoginbankが出店した横浜での素材博覧会では、こぎん 糸とは違う 刺し子 糸をはじめて販売しました。刺し子 糸は こぎん 糸よりも細いのです。刺し子をされる方の中には、こぎん 糸を割って刺し子 糸として使われる方もいらっしゃいますが、やはり専用で作られた 刺し子 糸が使い勝手は良さそうです。会場では沢山の刺し子loverにお買い求めいただいたのですが、この販売にはちょっとした意図がありました。

ここ数年、こぎん 刺しの人気を飛び越え、日本国外でも 刺し子 の人気が高いようなのです。なぜそんなに人気があるのか、その魅力は何ぞや?と思い、ヒアリングを兼ね、お客様に 刺し子 のことをいろいろ教えていただきました。

何も考えずに楽しむ

刺し子loverの皆さんが口をそろえておっしゃったのは、刺し子は”何も考えずに楽しめる!”。

こぎん 刺しも布目が粗いから難しいことは考えずに楽しめるんだけどな~。と思うのですが、”数える”ことも考えることなので、刺し子より難しさを感じると言う方もいらっしゃいました。

言われてみると、確かに…。目数を数えることに気がとられていると、だいぶ進んでから間違いに気づき、何段も糸を解いてやり直すとか。間違いに気づいたけど原因の場所が見つからなかったり、戻りたくないジレンマに打ちひしがれてやる気が失せてしまったり。こぎん刺しは、一度つまずくと結構大きなストレスを抱え、楽しめなくなってしまうかもしれません。

しかし、こぎん 刺しだって何も考えずに無心に楽しめる模様があるんですよ!

3目の糸流れ。3目のステッチだけをひたすら布に走らせる。

単調すぎて見過ごしてきたけれど、こぎん刺しを楽しむための ”基本 オブ ザ キホン” と言えるのではないでしょうか。

刺し子 の基本 ”運針”

こぎん 刺しも全国に伝わる刺し子と同様に、刺し綴るという布の補強技術が発端と考えられています。かつて学校の授業で雑巾の運針をした経験はありませんか?こぎん刺しも最初はあのような運針から始まり、ステッチの並べ方に着目して美しい模様づくりに発展したのではないでしょうか。

こぎん刺しは奇数で布目を拾い針を通しますが、基本となるのは「1目・3目・5目」の3つ。特に3目の頻度は高いので、3目の長さを基準に覚えておくと、大体の模様は3種類のステッチの長さで構成しているので、モチーフの目数の構成が理解できるようになります。でも、まずはゲーム感覚で3目を駆使することを楽しみましょう。

3目を駆使する

こぎん 刺しは基本的に刺し糸の色を途中で変えることはないので、布を織る時の緯糸を通すのと同じように横幅いっぱいに一段ずつステッチを積み重ねて模様を作って行きます。これを3目だけをひたすら針で掬いステッチを入れてみます。

例えば、前段と同じ位置で糸目を出していくと縦ストライプが出来上がります。

前段から1目ズラしてステッチを積みあげると斜めのストライプになります。1目ズラすだけなら、前段を基準にして隣から針を出すと覚えると、目数を数えなくても進めることができます。こぎん刺しは、この斜めのラインが模様構成の大前提になります。

この斜めのストライプも気分転換にずらす方向を逆にしてみると、冒頭の画像のようなジグザグ模様に変わります。

また、3段おきに3目ズラすと市松模様になります。これも3目数える必要はなく、前段のステッチの位置を基準に針を通す位置がわかると市松模様が見えてきます。

ステッチの長さが一定なので、長さを感覚的に覚えるようになります。時々全体の進捗を確認すると、間違えたところはステッチの長さですぐ気が付くはず。針を動かしている最中も、なんとなく感じる違和感で間違いに気づくかもしれません。

これらの模様は途中で色を変えてみたり、段染めの糸で刺してみると、色変化の面白さで運針がグイグイ進めそうです。3目だけで作る模様はここで紹介した以外にもあります。どれも定番的な模様なので生活の中にも取り込みやすくておススメです。

ストライプを応用したジグザグ模様は糸の色を変えてみるのも楽しいです

ー無心の応用編ー

3目を駆使した模様づくりを満喫しきったら、応用編としてこんな模様はいかがでしょうか。

地刺し模様 菱刺しの図案

「八」の字を並べたこの模様は1目と3目だけで構成されています。斜めに走る3目のラインの止まるところがわからなくなりそうですが、ポイントを抑えると図案を見ずに進めることができます。

Point1・斜めのラインが交差するところは1目と3目でラインを分断する。5目は入らない。

Point2・ステッチの間隔は3目以上は開かない。

Point3・1目の出る位置は縦の同一列上になる。

Point4・1目は2段おきに前の1目の列の隣列に現れる。

Point5・1目は前段3目の中央に配置される。そして後段の真上は空く。

実際に刺してみたのがこちらです。

一見、細かくて気が遠くなりそうな印象の模様ですが、2つのラインがぶつかったらラインが切れる。を繰り返し、ヘリンボーン柄が見えてくると俄然面白くなってきます。この柄も時代に左右されない定番的な模様です。小さな小物にもヘリンボーン柄が映えるので、いろんなアイテムで楽しんでいただけます。

どんな模様のこぎん刺しでも、ご注意いただきたいのは”数えることにとらわれすぎない”こと。前段までの模様の流れと、後段に広がる模様がイメージできたら自ずとステッチの位置が決まります。そのためには、時々全体像を確認しながら進めることです。次第に模様構成のパターンを覚えてくると、図案を必要とせずとも作れるようになるはずです。

koginbank編集部 text/graph:石井






 


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