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こぎん刺しの糸を知る1

2017.12.01


皆さんはこぎん刺しにどんな糸を使われていますか?その糸は何処で購入していますか?
取材を通じてあちこちでお話を伺っていると、こぎん糸は全国の一般的な手芸品店では扱っているところが少ないので皆さん他の用途の糸を使ったり、オリジナル色の糸を自作されている様子が伺えます。最近はめっきりこぎんを刺すことから遠のいてしまった私は地元の弘前以外でこぎん刺しの材料を買ったことがなく、弘前ではバリエーションが豊富に揃うので糸に悩んだことがありませんでした。インスタグラムを拝見すると皆さん上手に工夫されていて、とても興味深いです。

上の写真は私の手持ちのこぎん糸の数々。少し古いですが、右から2つ目の緑の糸は今は販売されていない弘前の手芸品店しまやさんの糸。色のバリエーションが素敵で気に入って使っていました。私はこぎん刺しに使う糸は太ければなんでも使えると安直に考えていましたが、刺し糸は太ければ良いというわけでもないみたいです。

 

 

上の写真、左右の糸の違いがわかりますか?

皆さんご存知かもしれませんが、糸は刺していくうちに布に磨耗されて撚(よ)り(ねじれ具合のこと)が甘くなったり、痩せたりすることがあります。左の刺し始めは糸の撚りが綺麗に見えますが、刺し進めた右側の糸の最後の方は糸束にねじれが見えません。柔らかい糸ほどこの現象が起こりやすく、こうなると糸が磨耗で痩せてしまい切れやすくもなります。この度合いは「こぎん糸」でもメーカーによって違うのではないでしょうか。今回初めて手持ちの糸で比較してみました。

 

 

糸の撚りを解して比較してみると弘前市の手芸品店つきやさんのこぎん糸が断トツで撚りが堅く糸が細いです。糸の束がなかなか解れません。つきやさんには東京から教室の先生や作家さんも注文しています。ネット販売はしていないので電話注文か実際に足を運んで皆さん購入しています。それぞれの糸を比べてみると、こぎん糸も刺繍糸もどの糸も個性が違いすぎて、性能の良し悪しが測れません。これはそれぞれの持ち味を活かして楽しむのが一番です。このような糸の違いが実際に布に施された時にどのように違ってくるのでしょうか。今回は都内近郊でこぎん刺し教室をされているmittsu do madeniの藤本真紀子さんに教室やご自身の製作で使うこぎん刺しの糸についていろいろ教えていただきました。

 

こぎんバンク編集部までお越し下さった藤本さん

 

藤本さんが普段使っている糸はこんな感じのラインナップでした。

 

 

一般的に入手しやすいオリムパスのこぎん糸やDMCの刺繍糸。金ラメ、柿渋染もあります。

こぎんや刺し子の糸は色のバリエーションが少ないので色が欲しい時は刺繍糸を使います。こぎん刺しの糸以外では刺し子用の糸、見慣れない白いラベルの刺繍糸、奥の方の大きな糸の束が気になります。

 

 

この大きな糸の束の数々は刺し子用の糸。未晒し(無色)を購入してオリジナルで染めることもあるそうです。こちらの糸は飛騨高山の小鳥屋商店さんのオリジナル刺し子糸。ネット購入も可能です。

 

 

気になっていたこの白いラベルの糸はマタルボンという越前屋オリジナルの刺繍糸です。
東京近郊でこぎん刺しをされる方が足繁く通う越前屋さんはたくさんの刺繍糸はもちろん、こぎん用の布・コングレスも揃っています。ほとんどの刺繍糸や刺し子糸は6〜8本撚りの糸ですが、マタルボンは10本撚りでボリュームがあって柔らかく淡い色のバリエーションが豊富です。このマタルボンをこぎん刺しに使われる方が多いそうです。

 

こぎん糸よりも細い刺し子糸を使っていることが気になります。個人的には太い糸で刺した方が模様もハッキリして良いのではと思っていたのですが 、太い糸は糸の撚り具合が目立つので刺し進めていくうちに撚りが甘くなったり糸が痩せたりすることが作品に見えやすいのだそうです。そのため、小さなアクセサリーに使うと太くて柔らかい糸は持ち味を綺麗に出せますが、日常的に使うバッグやポーチなどは刺した糸が磨耗しやすく抜けやすいのでお勧めできません。刺し子糸はこぎん糸に比べて少し細いですが、撚りが堅くしっかりしているので、模様を綺麗に均一に仕上げることができます。針も動かしやすいので、初心者の方には刺し子糸で刺すことを藤本さんはお勧めします。

 

手前から、黄色:越前屋マタルボン、青:DMC25番、白:オリムパスこぎん糸、ピンク:オリムパス刺し子糸

 

藤本さんが主に使っている糸の撚りの違いを見てみました。
手前から、黄色:越前屋マタルボン、青:DMC25番、白:オリムパスこぎん糸、ピンク:オリムパス刺し子糸。少し引っ張って並べています。それでも黄色いマタルボンはボリュームがあります。刺し子糸の撚りの堅さが他とは違うのがはっきりわかります。このように引っ張って比較するとぎん糸と刺し子糸の太さの違いはわかりません。

 

 

藤本さんが今製作されているこぎん刺しも刺し子糸を使っていました。細い糸だと模様が貧弱になるのじゃないかと想像していましたが、寧ろ模様の幾何学的な美しさがはっきりきれいに出ています。針がテンポよく動く様子を見ていると糸もスムーズに通るみたいで作業性も良さそうです。

 

糸は同じ糸でも色(染料)の違いで糸の滑りの良し悪しが違うこともあります。また、こぎん刺しを施す布にも糸通りの良し悪しがあるので布と糸との相性は様々です。他にも刺す人の針を動かす癖によっても糸の使い勝手が違ってくるので一概に良い糸というのは挙げられませんが、太さと堅さの違いがどのように製作に響いてくるかがわかると、製作のイメージがし易く、使ってみたい糸のバリエーションも広がってくるのではないでしょうか。是非皆さんもこぎん刺しの糸に悩んだら参考にしてみてください。

 

 

藤本さんありがとうございました!

mittsu do madeni・藤本真紀子さんについて

青森市出身。こぎん刺しとの初めての出会いは小学校のこぎん刺しクラブ。30歳を過ぎてから本格的にこぎん刺しの製作を始め、mittsu do madeniというブランドネームで作品を発表されています。ちなみに、mittsu do madeni(ミッツ ド マデニ)とは津軽弁で「じっくりと丁寧に」という意味。素敵な青森愛を持つ藤本さんは教室でも津軽弁を交えて教えられ、こぎん刺しだけじゃなく青森も身近に感じていただけるような教室を開催されています。
mittsu do madeni webサイトはこちら

mittsu do madeniの藤本さんの教室一覧はこちら
https://koginbank.com/class/teacher/mittsu-do-madeni/

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インタビュー:koginbank編集部  text:石井/ photo:浅井・石井

 







 


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