2017冬の弘前訪問記1〜佐藤さんのこぎん刺しに再会〜
昨年末、こぎんバンクはスタッフ総出で弘前のこぎん刺しを訪ねてきました。
奇遇にも滅多にない厳しい寒波とともに東京から北上してしまい、雪国未経験の私以外の2名のメンバーにとっては雪国の洗礼とも言える旅になりました。これから少しずつこの時訪れたこぎん刺しをレポートして行きます。
まずは夏に訪ねた佐藤陽子こぎん展示館の佐藤陽子さんのもとへ。
ちょうど、この日は佐藤さんが初めてご自身の展示館を飛び出し、弘前市内の藤田記念庭園考古館で20日間開催していた『こぎん 冬の陣〜春待つこころ〜』展の最終日でした。
佐藤さんは、現在多くの人に愛好されるこぎん刺しの、昭和の復興期に尽力された前田セツ氏や高橋寛子氏に師事し、長年こぎん刺しの製作を続けていらっしゃいます。多くの人にこぎん刺しの魅力を伝えたいと2010年にはご自宅を改修しこぎん展示館をオープンしました。
展示館の様子はこちら 夏休み2017・佐藤陽子こぎん展示館を訪ねて
今回の展示では、展示館に収蔵されている150〜200年前の古作の野良着や、佐藤さんの作品の数々から約200点を展示され、会場から溢れ出んばかりの圧巻の作品群でした。久しぶりにお会いした佐藤さんは車椅子に座られていてびっくり!会期中はずっと会場にいらっしゃった佐藤さんは不慣れな立ち仕事で脚を悪くされてしまったのだとか、そんな大変な様子を少しも感じさせない満面の笑顔で迎えてくれました。
佐藤さんのこぎん刺しは弘前市内各所でも見ることができます。
弘前市役所市民課及び国保年金課では、総合受付カウンターや窓口のナンバーパネルは佐藤さんの刺したこぎん刺しで作られています。遠目で見ると普通に見やすいナンバーパネルですが、近づいてみると確かに一針一針刺されたこぎん刺しなのです。
弘前市のシンボルであるリンゴと桜をモチーフが愛らしいです。このりんごと桜のモチーフには其々りんごと桜で染めた糸で刺されています。
弘前市は建築が好きな人には、日本建築界の巨匠・前川國男が設計した建物が纏まって現存していることで有名です。かつて建築学生だったこぎんバンクメンバーも前川建築は見逃せません。この弘前市役所も前川國男の設計による建物で、特徴的なコンクリートとタイル張りの重厚感や、随所に見られる大胆な意匠は現代建築では実現が難しい建築物です。この重厚な空間でこぎん刺しの柔らかさに触れるととても和みます。
駅前にあるヒロロスクエア内の市民課分室にも佐藤さんのこぎん刺しがありました!
壁には佐藤さんの作品パネルも展示されていました。
こちらの窓口の壁にはこぎん刺しではお馴染みの紗綾型パターンがプリントされています。紗綾型は卍が特徴的な模様です。弘前の市章卍と関連したデザインなのかもしれません。
佐藤さんの作品を振り返ってみると、40年以上もこぎん刺しを刺されているとは言っても、あの大作の数ってすごいことではないでしょうか。市役所のナンバープレート1枚作るとしたら、私は何ヶ月かかるだろうかと考えたら佐藤さんのこぎん刺しへの情熱に驚かされます。
佐藤さんのこぎん刺しはオリジナルの12本撚りの糸で刺されています。これだけのボリュームのある糸は珍しいです。作品の大小に関わらずキリッと力強い印象を受ける理由の一つはこのオリジナルの糸にあるのかもしれません。これらのこぎん刺しは気軽にご覧いただけます。弘前にお越しの際は是非立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
佐藤陽子こぎん展示館
http://youko-kogintenjikan.com
展示会場の藤田記念庭園考古館(匠館)
http://www.hirosakipark.or.jp/hujita/kouko.html
弘前市役所
http://www.city.hirosaki.aomori.jp
ヒロロスクエア
http://www.hirorosquare.jp/facility02.html