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世界の模様2 台湾賽夏族伝統衣装

2021.01.25


上の画像はcleverclaire, CC 表示 2.0 による
リュックのように背負っているのは尻の鈴と呼ばれる祭事の重要な衣装の一つ

 

日本のお隣の台湾には、独自の文化を持つ多くの原住民族が存在します。その中でも賽夏(サイシャット)族は、僅か6千人余り(2017年現在)で、台湾北西部の山岳地域に住む少数民族です。彼らは超自然神と祖霊、矮霊を信仰し、二年一度旧暦10月に盛大な矮霊祭を開催しています。

パスタアイとも呼ばれるこの祭りは、昔から伝わる小人伝説に基づき、期間中毎晩徹夜で行われます。歌や踊りで霊を迎え、楽しませて送り帰し、そのなかで祖先の教えを思い起こす祭です。

 

 

この矮霊祭には男女とも賽夏族の華麗な伝統衣装を纏います。色彩は白を基調色とし、赤をアクセントカラーに、そして黒で引き締めます。それぞれの色には意味をもっているそうです。白は心の善良と潔白を表し、赤は幸せと元気を願い、黒は裏心がないよう慎むことを表します。

 

 

上は台湾大学のデジタルコレクションで閲覧できる古い賽夏族の衣装です。この伝統衣装の背面の大胆な文様は織りで構成されていますが、菱形のモチーフを組み合わせてパターン化されており、東こぎんの模様にとてもよく似ています。
下は古作の東こぎんの背中の模様です。(大川コレクションより)

 

 

東こぎんは斜めのグリット状に走るライン模様の中に、小さなモドコを組み合わせて大きく作った菱形の模様が配置されています。この模様構成は同じようです。

また、賽夏族の衣装には卍形が入る模様も多く見られます。

 

 

仏教と関係する日本の紗綾形とは違い、賽夏族の卍形は雷女が天から山中に降りてくださったことを感謝するために、交差する二本の稲妻を図案化したとされています。これは前回紹介したラトビアの卍形と意味合いがとてもよく似ています。

 

他には、連続の菱形模様は蛇の鱗や祖霊の目だと考えられています。
特に蛇の鱗と言われる所以は、実際に比較してみると納得でした。下はアマゾンで見つけたパイソン柄のバッグです。

 

 

下の模様は賽夏族の衣装の中で見つけた菱形を並べたライン模様です。どうでしょう、模様の間隔を広げてみると上のパイソン柄に近くないですか?

 

 

賽夏族だけでなく、台湾の原住民にはそれぞれ独自の文様があります。直線の幾何学模様に限らず、曲線で表現されたものや身近な物を抽象化したものなど様々ありますが、菱形を展開する幾何学模様はどの民族でも使われています。賽夏族は違うようですが、原住民族には蛇を信仰する民族もいるので、歴史の中でそれぞれの文化が融合され、賽夏族でも神聖な模様として使われているのかなと考えられます。

昨今は、時代の変遷の中で世界的にも民族の独自文化は凋落してきていますが、台湾ではこの賽夏族の民族衣装も含め原住民族の文化振興活動が民政共に精力的におこなわれているようです。

 

参考文献

臺灣原住民數位博物館:https://www.dmtip.gov.tw/web/page/detail?l1=2&l2=33&l3=400&l4=413

台湾原住民文化考察:赛夏人矮灵祭

台湾原住民の集落空間と固有文化からみる集住環境の構成原理に関する研究

順益台湾原住民博物館:http://www.museum.org.tw/symm_jp/083.htm

ni ’oya’ kaSpinawka’ katapa:ngasan 找回母親失落的臀鈴

調査協力:沈垣 テキスト : koginbank編集部(石井)






 


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