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世田谷・WASABI-Elişi(ワサビ・エリシ)のこぎん刺し教室

2018.04.03


世田谷の閑静な住宅街を歩いていると、突如自然豊かな風情のある素敵な街並みが現れました。
ワサビ・エリシはこの一画にある素敵な雑貨店です。お店の名前のWASABI-Elişi(ワサビ・エリシ)とは、清々しい青い葉の「わさび」とトルコ語で手仕事を意味するElişi(エリシ)を合わせた名前です。2014年にオープンしました。

 

毎週末の天気のいい日はお店の入口に軒先パザルが週替わりで出店しています。

 

トルコの高品質なファブリックや、昔ながらの手仕事を地方のバザールや小さなお店に店主の赤松さんが直接足を運び、買付けて来たものをメインに販売しています。そしてトルコ以外にも「針仕事」をキーワードにパラグアイのニャンドゥティや針仕事のワークショップ、日本の作家の作品展も定期的に開催しています。

 

レースをあしらったトルコのタオルはとても柔らかな肌触りでした。

 

トルコのファブリックやアクセサリー、日本国内の作家の手仕事作品も並んでいます。

 
特にトルコの手芸Oya(オヤ)を使った商品はバリエーション様々に並んでいます。トルコの女性達は宗教柄、日常的に髪をスカーフで覆います。昔は女性たちが自らの嫁入り道具として仕立てるスカーフの縁飾りとして彩りを施していたものがオヤでした。このオヤも昔のこぎん刺しに似ていて、母から娘へと伝えられ、自分たちで嫁入り道具に施し準備するものでした。でも、オヤが得意ではない人は、オヤの上手な人を頼って、自身の嫁入り道具を彼女たちに依頼することもあったのだとか。

 

ビーズのオヤを縁飾りにあしらったスカーフ

 


上の写真はオヤの技法を活かしたネックレス。最近はこのオヤの技法を活用し、デザインされた小物やアクセサリーもつくられるようになり、オヤも多様になりました。

 

 

赤松さんがトルコで買付るオヤのスカーフはとても個性様々で、きっちり綺麗に施されたものもあれば、妙なところで突然色が変わっているもの、オヤがスカーフから余ってどうしようもない長さが延び出ているものもありました。沢山見ていると作り手の人柄が見えてきそうで微笑ましく、無駄な緊張が抜けて和んでしまいます。これらのスカーフは、本来は商品になるスカーフではなく、作り手の女性たちが自分で身につけたり、家族に贈ることを前提に作られたスカーフでした。赤松さんは、これらのスカーフには金銭に変わることを前提に作られるものには絶対に宿らない魅力があるのと、ひとつひとつ愛おしそうに見せてくれました。

 

 

オヤのスカーフを巻かせてもらいました

 

赤松さんがこぎん刺しを知ったのは、こぎん刺し作家 角舘徳子さんのご主人の来店がきっかけでした。当時は東京と青森とで別々に暮らしていた角舘夫妻ですが、ご主人は毎日通勤で店前を通るワサビ・エリシをオープンする前から気にかけていたそうで、オープンしたら行ってみるよと夫婦で話していたそうです。ワサビ・エリシがオープンしてから間もなく来店したご主人は、赤松さんに奥様のこぎん刺しのことを話しました。その時初めてこぎん刺しを知り、興味を持った赤松さんは、後日徳子さんに直接お会いしてこぎん刺し作品を見せてもらいながら詳しくこぎん刺しを教えてもらったのだそうです。この角舘さんとの出会いをきっかけに、ワサビ・エリシとこぎん刺しの関係がスタートしました。2015年には初めてこぎん刺しの作家作品を集めた展示を開催しました。その時はこぎん刺しを見るために遠方からわざわざ駆けつけた方もいらっしゃり、来店するお客様がいつもと少し雰囲気が違うと感じたそうです。

 

 

角舘徳子さんはこぎん刺しの作家として作品制作の傍、月に2回このワサビ・エリシでこぎん刺しを教えています。とても人気ですぐに満員になってしまう講座です。

弘前大学出身の角舘さんは、学生の時にゼミの先生に連れられて行った弘前こぎん研究所での体験がきっかけで、大学の卒業制作はこぎん刺しのタペストリーを制作し、卒業後は求人募集がなかったにもかかわらず、弘前こぎん研究所に自ら3度も頼み込んで勤めることができました。静かで控えめな印象を受ける角舘さんからは想像できないこの熱い衝動的な行動に驚いてしまいました。角舘さん自身、今思うと卒業制作で1枚こぎんを刺しただけなのに、これほど粘ってまでなぜ弘前こぎん研究所に入ろうと思ったのか不思議だと仰います。弘前こぎん研究所では、内職の刺し手さんに仕事を手配しながら、伝統模様のこぎん刺しを教わりました。

 

 

弘前こぎん研究所で伝統のこぎん刺しを習得していた角舘さんですが、勤めて2年半後、自分なりの表現を追求したいという思いから弘前こぎん研究所を退職し独立します。これには弘前こぎん研究所の伝統を重んじることからの反動もありました。でも独立してオリジナルを追求すると、こぎん刺しであるためには伝統模様じゃないとこぎん刺しにはならないと気づいたのだそうです。

 

 

教室では参加者に自由に制作をしてもらっています。参考資料や模様の持込みは自由で、他のこぎん刺し教室と掛け持ちで参加されている方もいらっしゃいます。最初の頃は教えることに伝統云々を意識していたこともありました。今は伝統にこだわらず、参加者の希望を制限なく受け入れてみることで角舘さん自身も知らない世界を教えてもらい、新しい発見ができると仰います。

 

 

教室では、角舘さんと皆さんがフランクで、持ち寄りパーティーのような印象を受けました。こぎん刺しをテーブルに乗せて、隣同士、向かい同士、お仕事も様々な皆さんで知らない世界の情報や新しい視点を見出し共有したり、こぎんで運針の技術を身につけたい人、故郷の伝統工芸を習得したいと言う人、こぎんを知ることで、それぞれが自分の世界を広げようとしてる研究会のような雰囲気もありました。こぎん刺しについて深く考え、丁寧に自らの答えを出す角舘さんらしいアカデミックな場になっていました。最後は皆さんで一服してこの日の教室はおしまいです。2時間はあっという間で、濃厚に凝縮された時間でした。

 

 

昨年の5月、ワサビ・エリシでは2度目となるこぎん刺しの展示会を角舘さんの作品で開催しました。その時に初めてこのお店を訪ね、私はこぎん刺し作家の角舘さんの存在を知りました。赤松さんのお話を聞きながら作品にに触れると、作家の人となりが作品からどんどん滲み出ているように見えてきました。その時飾られていた2枚のこぎん刺しのタペストリーのうち1枚は角舘さんが卒業制作で作った初めてのこぎん刺し。もう1枚は独立して間もなく作ったものでした。2枚を比べると、技量の違いは一目瞭然でしたが、赤松さんは初心さがある角舘さんの初めての作品がやっぱり好きなんだと仰っていたことがとても印象深く残っています。

 

 

商品の背景やストーリーが尊重され、これらの情報が溢れかえっている昨今ですが、物の魅力や作った人の魅力を最大限に引き出して伝えてくれる赤松さんのような伝え手は稀有な存在です。本当に”人が作った”物なんだという実感のようなものが、作り手の体温を伴って伝わってくるようでした。この愛情深く作り手を見つめる店主のお店「ワサビ・エリシ」が角舘さんの東京でのこぎん刺し活動の全てのスタートになりました。こぎん刺しが東京でこんな素敵な出会いを結んでいることが嬉しいです。

 

WASABI-Elişi (ワサビ・エリシ)について

http://www.wasabielisi.com/
営業時間:11:00~17:00(木・金 13:00~19:00)
定休日:火曜日(祝日は営業)
東京都世田谷区羽根木1-21-27 亀甲新 ろ60
TEL : 03-6379-2590
E-mail : info@wasabielisi.com

WASABI-Elişi のこぎん刺しワークショップについて

毎月、第一木曜と第二土曜の11:00〜13:00に開催しています。

定員:10名
受講料:一回4000円+税(材料費込み/チャイお菓子付)
持ち物:糸切りはさみ

お申し込みはこちら
http://www.wasabielisi.com/?mode=cate&cbid=2172835&csid=2

 

角舘徳子さんについて

岩手県大船渡市出身。弘前大学在学時にこぎん刺しに出会い、弘前こぎん研究所を経てこぎん刺し作家として活躍。昨年、全国の若手職人を顕彰するLexus New Takumi Project 2016に選出されました。
角館さんのこぎん刺し教室はこちら

角舘さんは、2018年4月4日(水)〜4月15日(日)まで、東京・国立で開催される「布のお楽しみ展」に出展されています。
詳しくはこちら
http://koginbank.com/topics/20180404event/

 

 

インタビュー:koginbank編集部 text:石井/ photo:鳥居

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