アボカド で糸を染める
こぎん刺しや菱刺しを楽しむ皆さんの中には、自ら糸を染めて色づくりから楽しまれる方も沢山いらっしゃると思います。中でも草木染は、雑踏な都心では贅沢な自然の豊かさを味わえる楽しみだと思っていたのですが、キッチンの廃棄物からも草木染ができるんですね。
スーパーで気軽に買える アボカド。この種皮は、あの見た目からは想像もつかないロマンティックなピンクに染めるのだそうで、実際にトライしてみました。
植物繊維の草木染は難しい
草木染は、植物をすり潰したり、煮だして出てくる色のついた液を染液として布や糸などを染めることができます。しかし、こぎん刺しに使われる麻や綿の植物繊維は毛糸やシルクの動物繊維と比べて染まりにくいのが難点です。そのため、濃く染めるための濃染処理が必要です。専用の薬品もありますが、豆乳のタンパク質に漬けることで動物繊維に近づける方法や、染料と結びつきやすいタンニン酸を含む染液で下染めする方法があります。
今回の アボカド 染は、ひたすらに普通のキッチンにあるものを使いたいので、牛乳で動物繊維になりすます方法と、タンニンでの下染めとして、アボカド に含まれるタンニンでの下染めを試してみました。
ところで、タンニン酸というのはタンニンの1種なのですが、果たして アボカド のタンニンがタンニン酸であるかは調べがつきませんできた。なので、アボカド染が下染めとして有効かどうかも確かめてみようと思います。
また、草木染では色の定着を促すためにミョウバンなどの媒染液に浸すことが必須なのだそうです。ですが、アボカド は種皮に含まれるタンニンが媒染の役目を果たすそうなので、今回は媒染を行わず下染めと1回の染めで行いました。
染め方は簡単
用意した材料は、アボカド の種皮1〜2個分と牛乳200ml。
染めるのはkoginbankオリジナルのこぎん糸30mを3束です。
①皮や種に付着した実を洗い落とし、実は細かく切ります。
②水1リットルに種皮を入れ、弱火で煮だします。
③15~20分位煮だし、液を濾します。
④一晩置いておきます。
液を泡立て器で混ぜまわすなどして空気に触れさせると、酸化を促進して濃い染液になるらしいです。
⑤糸の下染めをします。
1つ目は、牛乳200mlと同量の水の入った下染め液に30分つけ置いたあとに軽く絞って干しておきます。
2つ目は、アボカド の2番液(③で濾した種皮をもう一度煮出した液)に30分つけ置き干しておきます。
⑤一晩置いた染液を沸騰直前まで火にかけます。
染める前の糸が下の状態です。
⑦下染めした糸を洗って軽く絞り、染液に20~30分漬けます。
染液の量は、染める糸が液の中で存分に泳げる量が必要です。小さな糸束でも1リットルあれば十分だと思います。
⑧よく洗って干します。
染めたての糸の左右の糸は精錬済みの糸で、下染め方法が違います。牛乳で下染めした方が濃く染まったのか?乾くのを待ちます。
乾いた糸が上の画像です。中央から右側がアボカド2度染めの糸です。下染めの違いに差がないように思えますが、右側は2度染めしたことで色はより濃く染まったことがわかります。中央から左のくすんだピンクが未晒しの糸になります。未晒しは染ムラが目立ちました。
白のニュアンスカラーを楽しむ
キッチンでできる草木染としては、他にも玉ねぎの皮や茶葉の出がらしを使って染めることもできます。動物繊維に比べて綿は染まりにくいですが、こぎん糸としては、淡色のいろんな色づくりを楽しめそうです。濃い色の布に合わせたり、画像のようなタテヨコで色が違う糸で織られた布は、白系の糸を使って刺すと比較的目が疲れないので、草木染で微妙に色づく淡色は楽しめそうだと思います。
草木染は日光や保存環境によって変色しやすく、作品をつくる上ではこの不安定さが悩みどころになるかもしれませんが、この経年変化を楽しむこぎん刺しというのも良いのではないでしょうか。植物で色をつくるというのも、模様を作る楽しさとは違い、気分転換になる面白さだなと思いました。
【参考資料】
つくってあそぼう18 草木染の絵本 農山漁村文化協会2006年発行
キッチンでできる草木染めレッスン帖 佐藤麻陽 著 ブティック社2022年発行
草木染め大全―染料植物から染色技法まですべてがわかる 箕輪直子 著 誠文堂新光社 2010年発行
【参考URL】
きぬの木堂【家にある素材で草木染め】アボカドでピンクに染める方法【SDGs】
トーマスイッチ タンニンとタンニン酸の違いとは?分かりやすく解説!