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東京・南部菱刺しの会を訪ねる

2017.09.08


こぎん刺しとは似て非なる南部菱刺しを皆さんご存知でしょうか?恥ずかしながら私も数ヶ月前まで「南部菱刺し」という言葉を知りませんでした。

こぎん刺しの知名度を全国的に押し広げたと言われる民芸運動の機関誌「工芸」14号(昭和7年発行)ではこぎん刺しと一緒に南部菱刺しも紹介されていました。柳宗悦氏は「地方的な日本刺繍としてこれほど多彩な美しい品を私は見たことがない。知らなければ、スカンジナビアあたりの物と思うであろう。」と評しています。しかし、南部菱刺しは残っている資料がとても少なく、この誌面でも菱刺しのページはこぎん刺しの半分程でした。この工芸をきっかけにこぎん刺しは活発な普及活動を進め知名度を広げていった一方で南部菱刺しはなかなか知名度が広がらず、私のように菱刺しを見てこぎん刺しと勘違いされている方は多いかもしれません。

 

※菱刺しとこぎん刺しの特徴の違いはこちら

 

全国のカルチャースクールでも圧倒的に数は少ないですが、菱刺しに特化した教室が東京近郊にもあります。その一つ、東京・調布市で月に一度開かれている南部菱刺しの会を訪ねてきました。

 

 

主催する調布工芸美術協会会員の長岡喜美子さんは10年ほど前に婦人誌で見た菱刺しの着物帯に魅了され、図書館で調べるところから菱刺しを独学ではじめました。図書館では調べきれない情報を求め、菱刺しの発祥の地・青森県八戸市までも脚を運んでいます。生まれも育ちもずっと東京の長岡さんですが、何の伝もない八戸に何度も足を運び、調査を重ねるうちに出来たご縁で都内近郊で教えてくださる師に巡り会いました。7年前にその先生に背中を押されたことをきっかけにご自宅で菱刺しを教え始め、2013年からは現在の場所を借りてたくさんの方に菱刺しを教えられています。

教室を開いている場所は公共のオープンスペースで、市民の様々なグループが大きなテーブルを囲んで活動している場所です。ここの一画で毎月第3月曜日に南部菱刺しの会は行われています。どんな人も自由に出入りができるスペースなので気軽に製作の様子が見学ができ、長岡さんともお話ができます。10:30〜16:30までの時間内で参加される方も自由に時間を決めて参加しています。

 


仕立てられた作品には長岡さんの南部菱刺し工房のタグが付きます。

 

教室では、初めて参加される方は20センチ角ほどの小さな布に菱刺しを刺して慣れるところから始まります。その後は自身の作りたいものを自由に長岡さんと相談しながら製作を進めていきます。参加者は年配のおしゃれな方が多く、裁縫や手芸の経験がありポーチやバッグ、テーブルセンターなど比較的大きい作品に挑まれていました。また、夏休み中のお子さんと親子で参加される方もいらっしゃるそうです。長岡さんは参加される方々のレベルに合わせてアドバイスされ、参加者同士でも教え合いながら進めているので、手芸の経験が無い方でも気軽にはじめられます。バッグやポーチの仕立ては自身で出来なければ長岡さんにお願いすることも可能です。そしてこの教室での作品は調布工芸美術協会展や調布市文化祭工芸展に出展されます。

参加者の中には菱刺しを知りたくて、習いたくてわざわざ遠方から来られる方もいらっしゃいます。熱心に通われる参加者のためにも長岡さんは、毎月第3月曜日の10:30〜16:30は何があってもここに来るのと仰います。菱刺しを広く多くの方に知っていただきたいと、このオープンな場所での教室開催を決めた長岡さんは菱刺しを知りたい人との情報交流の場にもしたいと仰っていました。

 


こちらが長岡さんの作った前垂れ(前掛け)

 

教室では菱刺しの原点として生徒さんに一度は前垂れ(前掛け)を作ってもらっています。今回の取材の機会を作ってくださった梅澤さんはこの教室で菱刺しを習っていらっしゃいました。この日は産休を経て久しぶりの参加となりました。梅澤さんの刺し認めていた前掛けの腰紐にと、長岡さんが買い付けたアンティークの着物生地を見繕って合わせている様子は和気藹々と楽しそうでした。

こぎん刺しも習い、両方を知る梅澤さんは菱刺しは女性の物なんだと刺すほどに深く納得するのだと言います。カラフルな糸の色使いや横長の菱型模様、その中に収まる曲線的な模様など、針を進めていくと湧いてくる感動は女性ならではなのかもしれません。藍と色の縦長な菱模様でシャープな印象のこぎん刺しと比べると一層強く感じるのだそうです。

 

 

今年の春に日本ヴォーグ社より「菱刺し模様集の<復刻版>」が発売されました。この本には400種類もの模様が収録されています。歴史文献が少なく、積極的な保存継承活動もこれまで見られなかったにも関わらずこれだけの数を纏めて書籍にしたのは長岡さんの恩師をはじめとする菱刺しに魅了された女性たちでした。私はこれだけの模様を丁寧にまとめられたこの本には、社会の中で男性の力が今よりずっと大きかった時代の中で細く長く地道に菱刺しの魅力を継承してきた女性たちの真の強さを感じていました。その矢先にお会いできた長岡さんは菱刺しをずっと現代まで繋げてきた女性たちの想いを受けとめ次世代に繋げて行こうとされる凛としたエネルギーを感じる素敵な女性でした。

 

インタビュー:koginbank編集部  text:石井/ photo:鳥居

 

南部菱刺しの会の詳細はこちら
http://koginbank.com/class/hisizashi-tokyo-chofu/

 

南部菱刺しの会作品展のお知らせ

南部菱刺しの会では調布市工芸美術協会主催の以下の展覧会に出展します。ぜひ脚をお運びください。

チャリティ工芸美術展

日時:2017年9月21日(木)〜26日(火)
場所:深大寺まんじゅえん(東京都調布市深大寺元町3-30-3)

文化祭工芸美術展

日時:2017年10月25日(水)〜30日(月)
場所:調布市文化会館たづくりギャラリー(東京都調布市小島町2-33-1)

 

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