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みちのくの ひと織り ひと刺し展へ

2020.09.10


山形県米沢市の出羽の織座から東北の素晴らしい布たちがやってきました。

ご覧いただきたいのは、壁に掛けられた日本三大刺し子の下に広げられた貴重な布の数々です。

 

今でこそ当たり前のようにコットンを纏う日常な訳ですが、100年ちょっと前は布が貴重でした。特に綿花が育たない東北は、都から北前船でもたらされる古着が庶民の大事な衣類。しかし寒さに耐え忍ぶには薄い布が多く、縫い合わせて着用することから刺し子が発達しました。山形より北の雪深い津軽では農民の木綿着用は禁じられ、自給自足が可能な麻を織り、織り目の隙間を塞ぐように刺し子したのがこぎん刺しのはじまりです。寒い地域で貴重な布を大切に使い続ける技として東北には刺し子がありました。

 

 

一方で、古着の流通に頼らず、身近な環境資源から布を作る技術もありました。

和紙を糸に撚って織られた紙布。古い台帳などを紙縒にして作られた帯は、台帳にあった文字がいい塩梅で白地に表情を与えるテクスチャーになります。

山菜として食するぜんまいの綿毛でできた、ぜんまい紬は柔らかくて防水性もあり、現代の生活でも使い勝手良さそう。他にも、しなの樹皮を織ったしな布や、昔はこぎん刺しにも使われた苧。琴の弦をバラシて撚りなおした糸で織った琴糸織にはそこまでやるのか!とビビります。

どんな布も、気が遠くなるくらいとても手間暇がかかる。でもこの手間を惜しまずに作っていた。それだけ当時は、生活の布を得ることが本当に大変だったのだろうと想像します。

 

ぜんまい織のショールはふかふかでしっとり。

 

今、これらの希少な布づくりの技術は継承されることなく忘れ去られそうです。

数年前からエシカルやサステナブルという言葉を耳にするようになり、地球環境に配慮した持続可能なライフスタイルがトレンドとして意識されるようになりました。日本でもつい最近お店のポリ袋が有料になり、身近な問題として意識し始めた真っ只中だという方は結構いらっしゃるのではないでしょうか。こんな最中に、既に日本には存在していたエシカルでサステイナブルなものづくりが消えようとしてるなんて皮肉なことです。これこそ日本が今、世界に誇るすごい技術なんじゃないかと思います。

 

 

こぎん刺しや菱刺しは気軽に楽しめる手芸として、そう簡単には消えることはないだろうと思います。しかし一方で、掛ける手間が合理的な時世にそぐわず消えようとしているけど、今まさに見直す必要があるこれら希少布の存在をどうにかできないものかと、歯がゆい思いで作品の数々を眺めていたのですが、惹きつけられたのが冒頭のいぶし銀にきらめくこぎん刺しです。地となるぜんまい紬をとても魅力的に引き立てていました。こぎん刺しが布の魅力を引き立てる。こぎん刺しがこんな風にも活躍できるのかと、新しい姿が見えた思いでした。

 

しな布にとても綺麗に正藍型染めで描かれています。

 

日本三大刺し子が並ぶのも然りですが、これらの貴重な布が一堂に会して直に触れることができるのもなかなかの貴重な機会です。告知の会期は12日(土)までとなっていますが、今月いっぱいは展示を続けるとのことなので、布や織が好きな方は、ぜひこの機会を逃さずご覧になっていただきたいです。

 

 

みちのくの ひと織り・ひと刺し展

    -木の皮や草で織った布を彩る-

2020年 9月6日(日)~9月12日(土)

瑞玉ギャラリー

〒173-0004
東京都板橋区板橋2-45-11

JR埼京線板橋駅西口から徒歩10分
 東武東上線下板橋駅北口から徒歩7分
 都営三田線板橋区役所前駅A2出口から徒歩8分

布の展示は2階で、1階には各地の陶芸家の作品が展示されています。
NHK連続小説のスカーレットで見た信楽の自然釉の壺なども見ることができました。

koginbank編集部:石井






 


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