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こぎん刺しの布を考える1

2020.02.21


こぎん刺しをされる皆さんはどんな布をお使いですか?
針で布目を掬えるような布目の粗い布となると、どんな布があるのでしょう?
実際にこぎん刺し用の布としてどんなものがあるのか集めてみました。

 

昔と現代の布の違い

今回、布を集めるにあたり、まずを脚を運んだのは東京・八重洲にある刺繍専門店の越前屋さんです。こちらでは国内外からいろんな刺繍の素材が揃っています。お店の1階には刺繍用の布がたくさんあって、こぎん刺し用の布を探すのに戸惑いました。それでもいろいろ見ているうちに、ヨーロッパの刺繍布を物色していたら、布目密度をカウント数で表記されていることを知りました。そこで、昔のこぎん刺しの布を改めて調べてみました。江戸時代末期から明治時代の頃のこぎん刺しの着物は麻布でした。当時の津軽地方の農民は綿を着用することが許されず、自分たちの畑で収穫した麻で布を作り着物に仕立てました。こぎんの麻布は一般的な大麻と、上布で知られる苧(からむし)の2種類が使われていました。これらの布目の密度は1㎝四方あたり13×10~16×13目。なかでも苧は、布目が約16×13目と緻密で、大麻に比べると繊細でしなやかで少し艶もあって、こぎん刺しの中でも上質と評されました。

 

 

現在は、こぎん刺しに使われる布は経糸が1㎝あたり7~8目が多く、コングレスと呼ばれる綿布がこぎん刺し用の布として知られています。上の図で昔の麻布とコングレスの布目の密度を比較してみました。昔の布は、経糸(タテ)と緯糸(ヨコ)の比率が違います。緯糸が経糸より入る本数が少ないので、緯糸の感覚が広くなり、その分模様が縦に伸びていきます。現在は機械生産や効率化によって布目のタテヨコ比率は特殊な布以外は1:1になっています。昔と比べると、今は2倍も大きい布目でこぎん刺しをしていることが上の図でわかります。

 

 

昔の布のタテヨコ比が違うのは、当時の手織機の技術によるものと考えていたのですが、手織りに詳しい人の話では、敢えて経糸を密に入れているのではないかと。手織機では筬(おさ)という道具で経糸の数を調整できますが、緯糸には調整する道具がありません。こぎんに使われるような平織の布は、経糸を密に入れることで、緯糸を押し込んでも、ぎゅうぎゅうに並んだ経糸の摩擦が大きくて押し込みきれず、緯糸間に隙間が出来てしまう。隙間が出来ると後からそこに針(こぎん糸)を通すことができる訳です。実際の当時の状況はわからず私の推測でしかありませんが、もしかしたらこぎんを刺すために意図的になされたことなのかもしれません。

 

昔の布に近い密度に挑戦したくて、近い布を探し出しました。ヨーロッパの刺繍用リネンで、ベルファーストの32カウントです。ヨーロッパの刺繍用リネンは1インチ当たりの目数(カウント)で密度を計り、商品名と一緒にカウント数も記載されているので便利です。昔のこぎん布と同じくらいの密度は32~40カウントになります。

 

 

koginbankで作った天然藍染のこぎん糸(8番単糸4本縒り)を刺してみました。上の画像中央に2個並んだ”花こ”のモドコです。画像左下は比較参考にコングレスに同じ糸で刺してみました。布の密度に対して糸が太く、模様の凹凸がくっきりです。老眼で布目が見えず、小さな花このモドコすら、目数を数えることを諦めたくなります。途中から勘に頼って刺していたら間違えてしまったのが右のモドコで、左は改めて正しく刺し直したものです。

 

ここで使ったこぎん糸は一昨年、私たちが古作の着物に刺されたこぎん糸を参考に、太さなどを近い仕様で作った糸ですが、昔はこの布目の細かさにこんなに太い糸刺したのは本当かな?と信じがたいくらい糸が進みにくく、挫折しそうになります。今回は糸の撚りあわせの数を調整せず4本のまま使用しましたが、改めて古作をいろいろ見てみると、着物によって単糸の本数を減らしたりしていました。

 

以前に、手元にあった布で作ったこぎん刺しが、昔のこぎんと同じ布目密度であることが今回わかりました。その布が上の画像右下の茶色い布です。素材などは不明なのですが、この布にこぎん刺しを挑戦して、2度とやりたくないと思うくらい苦行だったのは今もはっきり覚えています。

 

背面はコングレスで作ったもの。手前が私史上精密なこぎん刺しです。

 

茶色の布で作ったこぎんは上の画像の交通ICカード用ポーチとなり、毎日握っていたのでボロボロですが、使っているうちにスレて糸が抜け落ちることに感じる寂びは、この布目の細かさだからこそ叶うことなのかなと思います。やはり私はもう2度と、こんな細かいこぎん刺しはできません。昔は7歳くらいからこぎん刺しをはじめ、10代になると、嫁入り準備として本格的に総模様を刺していたと言いますが、この細かな仕事で少女たちの視力はどうだったのでしょう?当時の津軽の少女達の目が今すごく心配です。

 

現在、こぎん刺しに使われる布の布目密度は1㎝あたり7~8目のものが主流です。ヨーロッパの刺繍布で言うと、18~20カウントになります。この密度で入手できる布を集めて、刺し心地を調べてみました。

 

コングレスに近い布

コングレスはこぎん刺し用の布として、比較的入手しやすい布ではないでしょうか。普通の布よりも肉厚で握りやすく、布目の凹凸がはっきりしているので布目は数えやすい。そして、布の経糸・緯糸の断面が円形で堅めなので布目が針ですくいやすく、初心者におススメです。このコングレスに近い風合いの布を探し、いくつかピックアップしました。

 

 

① ツバイガルトのダボサ:18カウント(1㎝当たり7.1目)
https://www.doishugei.com/embroidery/fabric/zwgcdv.html
ドイツのZweigart社の刺繍布です。綿100%。コングレスより握った時の肉厚感が少し足りない感じがしますが、これが寧ろ運針の時に握りやすいと思いました。布の凹凸がコングレスに比べると、ややフラットだからか、布の発色が均一で綺麗です。

 

② インド製のピュアコットン(1㎝当たりタテ8目xヨコ7目)
新宿のオカダヤで購入したインドのピュアコットンは、コングレスと同じくらい厚い布なのに、とても柔らかくて気持ち良い肌ざわりです。糊加工されていないので、こぎん刺し中の布端のバラけやすさに注意が必要です。布の経糸・緯糸の太さが他の綿布に比べるとバラつきがありますが、麻布ほどではないので、布目が数えづらいことはないです。模様は少し縦長になります。

 

③ ツバイガルト ベラナ:20カウント(1㎝当たり8目)
https://www.doishugei.com/embroidery/fabric/zwgcbl.html
こちらもドイツZweigart社の刺繍布です。綿とレーヨンの混紡で、ダボサより少し薄手かな?という感触です。布面がしっかりしていて、布の切れ端がバラけにくく、目が詰まっているので、糸を通す時の摩擦がコングレスより大きいです。

 

④ ツバイガルト フローバ:18カウント(1㎝当たり6.9目)
https://www.doishugei.com/embroidery/fabric/zwglfl.html
麻とレーヨンの混紡で、前出のダボサにかなり似ています。経糸・緯糸の太さが均一で、布目が数えやすいです。感触は麻特有のザラザラした感じが抑えられ、綿に近い柔らかさです。このナチュラルな色合いは人気がありそうです。

 

麻はどうだ?

一般的に麻は綿の柔らかさとは違いゴワゴワした、心地よいとは言えない感触ですが、ここに綿糸でこぎんを刺すと、柔らかさと温かみが出て雰囲気が変わるのが魅力です。ただ、布の経糸・緯糸の太さが均一ではないので布目が数えにくく、眼精疲労が辛かったり、慣れないとちょっと難しいかもしれません。

 

 

① 越前屋オリジナル麻布 1㎝当たり約7目
東京・八重洲の刺繍用品専門店・越前屋さんオリジナルの麻布は、糊加工が弱く、麻ならではのナチュラルな感触が気持ちいいです。経糸・緯糸の太さが比較的均一なので、布目の数えやすい麻布です。

 

② オリンパスのこぎん刺し用リネン:20カウント(1㎝当たり8目)
https://www.olympus-thread.com/lineup/embroidery/embroideryribbon/linen_cloth/no3500/4971451314540.html/field/colorChart/350050/keyword/No.3500/#prettyPhoto
コングレスでお馴染みのオリンパス社から、こぎん刺し用のリネンクロスが販売されています。布目の密度は他の麻布と変わらないのですが、布の経緯糸の太さが他社より細いのか、透け感が認識できるくらい布目が粗い印象です。その分、布目は数えやすいです。糊加工が弱く、布端がバラけやすいのでこぎんを刺す前に布端の前処理が必要です。

 

③ ペルミン麻布:18カウント(1㎝当たり7.6目)
https://www.echizen-ya.net/product/7560
デンマークの刺繍メーカーPermin社の麻布は、バリバリに糊が効いていて厚紙のような固さです。他の麻布は針を通すと、経糸が針を避けるように移動します。そのうえ、経糸が太かったり細かったりするので、数えにくいのですが、布の経糸・緯糸がびくともしないくらいしっかり固定されているので、布目は確実に数えることができます。初心者には良いかもしれません。握ると比較的軽い力で折れ曲がるので、運針もできます。

 

最新のこぎん布

昨年、こぎん刺しの伝統に倣った麻布が販売されています。伝統に倣うとは、模様が縦長になるように、布の1㎝角当たりに入る緯(ヨコ)糸が経(タテ)糸に比べて少ない麻布です。

 

 

① 津軽工房社のこぎんデュエル 1㎝当たりタテ9目xヨコ7目
https://tugarukoubou.theshop.jp/items/25351448
出来上がる模様の縦横比は1.3:1。布の面がしなやかに動きます。布の経糸に針先がぶつかったとき、針が経糸の繊維を突き破って行きそうなところを、経糸は針を避けるように動き、避けた後戻るので、針すべりがいい布です。糊加工がされているのですが、運針しやすい適度な柔らかさがありました。感触が他の麻布と少し違ってツルツルしていて、繊維に少しツヤ感があります。

 

② ダルマのこぎん布 1㎝当たりタテ9目xヨコ7目
https://amzn.to/39StAQl
ダルマの手縫い糸でおなじみの横田から発売されたこぎん布です。出来上がるモドコの縦横比は1.3:1。糊が適度に効いていて運針しやすいのですが、経糸の太さの不均一さと布目の詰まり具合もあってちょっと数えづらい感じがしました。販売色は3色あるなかで、今回使った生成りは、他の生成りに比べて白さが際立ちました。この気持ちいい白さはかわいいこぎん刺しを実現できそうです。

 

平織りの布ならなんでもこぎん刺しはできると思っていましたが、布によって固さや密度など違いがあるので、こぎん刺しに向く布と向かない布があることがわかりました。紹介した他にもこぎん刺しに使えそうな布はまだまだありますので、また探してご紹介したいと考えています。

 

今回紹介した布でインターネットで購入できるものは、リンクアドレスを掲載しましたが、以下の店頭でも購入できます。

越前屋(東京・八重洲)
オカダヤ(新宿本店)
津軽工房社(青森県弘前市)
ドヰ手芸(神戸市中央区)

koginbank編集部 text・photo:石井






 


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