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こぎんで移住のキヌ子さん

2020.04.24


昨年、ステキなこぎん模様プリントのTシャツに出会いました。

作っているのは、青森県弘前市在住、コント芸人でもある砧川キヌ子さんです。昨年の4月弘前に移住し、cogin+T(こぎんと)というブランド名でこぎん刺し模様のプリントグッズを制作、販売しています。


すごいのは、プリントデザインの素材が実際にキヌ子さんが刺したこぎん刺しの画像なのです。私たちのオンラインショップで販売中の図案プリントグッズとは、全然印象が違います。かわいい(*´ω`*)~♡ 模様として浮き上がるステッチのふわふわ感が、絶妙な素朴さを醸し出しているプリントです。


こぎん刺しのかわいさがそのままTシャツに載っているようで、これは、こぎん好きな女子たちにも気に入ってもらえそう。

 

 

でも、かわいいだけじゃありません。この「津軽」スウェットは世代を超えて津軽の男たちを魅了しています。「津軽」の文字の渋さと、こぎん刺しの素朴さが相まって、カジュアルに纏えるカッコいいこぎんプリント。こぎん刺しは、”かわいい”も”かっこいい”も両方兼ね備えたハイブリットだったのかと納得させられます。

 

 

このキヌ子さんのTシャツを初めて見たとき、その手があったか~!と思いました。なんとなく既視感があったものの、あれが何だったのか思い出せなかったのです。しかし、今回直接伺うことができました。キヌ子さんは10年ほど前に買って愛用していたTシャツから、このこぎんプリントのヒントを得ていました。そのTシャツとは、当時ほぼ日刊イトイ新聞で販売されました。私も当時これを見て、可愛くてかわいくて、どれを買おうか悩んでいるうちに売り切れちゃったという残念な思い出があります。セーターをプリントしたTシャツの面白さと可愛さが相まってとても斬新なTシャツでした。この時のTシャツを持っていたキヌ子さんは、こぎん刺しもできるんじゃないかと着目しました。

 

いざ着手するには、まず、こぎん刺しを作ります。Tシャツにプリントするためのこぎん刺し。下の画像がそのこぎん刺しです。これだけの大きさを完成させるための針仕事の時間は相当なものです。出来上がるまでの道のりが果てしなく感じます。
キヌ子さんの図案デザインは、伝統模様のレイアウトで決まります。この並びを決めるのはかなり悩ましく、実際にこぎん刺しにしてみてもイメージと違う時は糸を解いてやり直したり、新しく作り直したりします。時間を費やして漸く出来上がったこぎん刺しはプリントネタが出来上がっただけに過ぎません。ここで3合目くらい。Tシャツ完成の頂上までには、まだまだ先があります。

 

 

素材となるこぎん刺しは、糸は白、布は黒か濃紺と決まっています。他の色ではプリントデータにすると、模様がはっきり綺麗に現れないのだそうです。

 

 

こぎん刺しをスキャナーからパソコンに画像として読み込み、図案が大きいときはパソコンの中でつなぎ合わせ、ステッチの粗さやコントラストを程よく調整してプリントデータを作成します。

Tシャツはプリントデータをメーカーに送って作ってもらうこともありますが、シルクスクリーンにプリントデータを転写して手刷りでつくるTシャツもあります。手刷りだと、載せるインクの量と刷る手加減でプリントの印象がずいぶん変わります。1枚のTシャツの中にも、どこかがかすれたり、どこかが滲んだりして味わい深い1着に仕上がります。

 

 

キヌ子さんの着ているこのTシャツは、ねぷた絵師による美人画がプリントのTシャツでしたが、オリジナルのこぎん模様を自らプリントしてカスタマイズしました。違和感なくこぎん刺しと美人が並んでいるステキな1着です。手刷りならではの風合いが、Tシャツプリントの手工芸的な一面を見せてくれます。

 

 

このデジタルなデザインもcogin+Tのこぎん刺し模様のTシャツです。
花こ」のモドコを2進法で表現しました。

 

2進法とは数の表現方法の1つです。私たちは普段10進法を使って数を数えます。
10進法では0から9まで数えたら、次は位が上がって10になります。
0,1,2,3,4,5,6,7,8,9 >> 10
2進法は0と1のみで数を数えるので、1の次は位が上がって10になります。
0,1 >> 10,11 >> 100
なので、10進法の3が2進法では11、4は100となるわけです。

 

2進法は数が大きくなると桁数が莫大になるので日常で使うのは辛いですが、パソコンの命令やデータ処理は、2進法が多く使われています。 モドコの表現を2進法で考えると、糸が表に出る=1か、出ない=0かで表現できるので、0と1を並べてこんなこぎん模様を表現できるわけです。。。どうでしょうか、ご理解いただけましたでしょうか。だから何?って感じですかね。個人的には、こぎん刺しの美が数学で表現できる一端を垣間見れてすごく感動したTシャツでして、キヌ子さんも気に入ってるデザインなんだそうです。ただ、こぎんファンにはあまり人気がなかったそうで、背景のストーリーが響く人は少ないかもしれません(寂)。

 

ところで、キヌ子さんは生まれも育ちも東京。弘前に移住するまで関東から出たことがありません。なぜにわざわざ弘前に移住したのでしょうか。 きっかけは人間椅子でした。

 

人間椅子」というロックバンドはご存知でしょうか。かつて一世を風靡したイカすバンド天国というテレビ番組から登場した弘前市出身のロックバンドです。

 

唐突ですが、人間椅子の無情のスキャットをどうぞ♪

 

キヌ子さんにとってイカ天は、リアルタイムで知る世代ではありませんが、好きなロックバンドがいくつもこのテレビ番組から出ていると後から知り、イカ天総集編を見て人間椅子を知りました。キヌ子さん、人間椅子が凄い好きです。取材中は人間椅子の音楽をBGMに、彼らの曲の魅力を解説してくれたのですが、教えられるほどに曲の凄さが響いてきて、思わぬ収穫を得た気分でした。

 

人間椅子のファンになったキヌ子さんは、もっと近くで彼らのライブを観たくて地方遠征へ。そしてたどり着いたのが彼らの故郷 弘前でした。青森県に関心を持つようになり、都内で開催される青森交流イベントに参加したり、弘前へも何度と脚を運び、青森の人との繋がりが少しずつ広がっていきました。こぎん刺しを知ったのは、交流イベントで見せてもらったこぎん刺しの名刺入れでした。もともと手芸が好きだったのでこれは自分でもできるぞと、こぎん刺しをするようになりました。青森に何度と脚を運び、津軽の環境の心地よさを覚え、移住を考えるようになりました。自身のライフスタイルを考えると、東京に執着する理由はありませんでした。寧ろ、津軽の自然環境の豊かさには、東京より充足した生活ができると感じました。東京での仕事を辞め、移住した今は、ゼロから弘前で生業を築いていくので、東京の頃に比べて生活は楽ではありませんが、津軽 弘前の自然や文化、生活のあらゆることを楽しみながら新しい人生を満喫しています。

 

 

仕事も生活も試行錯誤の移住1年を引き継いで、少しずつ活動を広げていこうと期待を胸に2年目に突入したキヌ子さんの弘前生活ですが、世界中に蔓延しているコロナウィルスにより、予期せぬ局面に立たされています。青森県内の大きな祭事は軒並み中止が決まり、今年初出店を予定していたこぎんフェスも中止となりました。大きな祭事が無くなると、小さなイベントも次々中止が決まります。実店舗を構えず、イベント出店とオンラインショップでの販売を行うcogin+Tには、とても厳しい2年目のスタートになりました。キヌ子さんは現在、オンラインショップでのサービス充実化に集中して進めています。従来のプリントグッズ販売に留まらず、デザインの提供や、これまでのデザインを掛け合わせてプレミアムな1点もののオーダーも予定しています。

 

 

今回の取材では、キヌ子さんからりんごの図案を提供いただきました。 飲食店のグッズ用にプリントデザインの依頼を受けて制作したものですが、依頼者のなぎさカフェさんの承諾もいただき、こぎんバンクのモドコDBに登録させていただきました。 リンゴ模様は2種類、サイズが大・小、計4つ提供いただきました。 

 

 

このプリントデザインのりんご模様が今回提供いただいた図案です。原画となるこぎん刺しが下の画像です。試作を重ねてデザインを詰めました。昨秋、りんご収穫のバイトでりんごの1個1個の違いを知り、品種を意識して葉っぱの形も微妙に違います。

 

 

こぎん模様のプリントデザインを通じて、 今までのこぎん刺しのイメージとはまた違ったこぎん刺し作品が 生まれそうだという手応えを感じていると言うキヌ子さん。ロック好きのカッコいいスタイルと、手芸好きのかわいいの両極を知り、表現のふり幅が広いので、キヌ子さんの感じた手ごたえがどんな作品に昇華されるのか、今後がとても楽しみです。

 

キヌ子さんの活動やcogin+Tの商品はこちらからご覧ください。
cogin+T(こぎんと)

インタビュー:koginbank編集部 text/photo:石井






 


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