koginbank

こぎん刺しの楽しい!かわいい!を発信 こぎんマガジン

「こぎんと菱刺し展」レポート

2021.06.13


【冒頭画像・撮影協力:坂上 和政

 

去る6月25日。koginbankとして初めて開催した展示会は、おかげさまで5日間の会期を無事に終えることができました。

 

そもそもは4月に開催されるはずだったホビーショーに出展するために準備をしてきましたが、開催を目前に控えた4月25日に新型コロナウィルス感染拡大にともない東京都では緊急事態宣言が発動され、やむ無くホビーショーは中止となってしまいました。

 

展示した東こぎんの背面。模様が肩と背中で切り替わっているのは珍しい。

 

年明けから展示のために我々は企画準備にはじまり、4月には作品も青森から届いて、会場での設営にスタンバイしていた矢先のことだったので今まで費やした時間が…。と軽く絶望してしまいましたが、もっと悔しい思いしている関係者がいらっしゃるんですよね。開催を楽しみに待っていた方もいらっしゃいました。本当だったら来年のホビーショーに向けて準備しているはずの今も主催者は中止による各方面への対応に追われています。なんともやるせないですが、次回のより良い開催につながることを願います。そして、こんな悲劇はもう終わってほしいものです。

 

 

我々がホビーショーへ出展しようとした目的は、手芸ファンに対するkoginbankのPRと春に発売したこぎん布の宣伝でした。手芸の中でこぎん刺しの存在を知る人は多いですが、こぎん刺しのコンテクストや菱刺しの存在を知る人は多くなく、菱刺しとの違いや歴史を知ることで、見る人の創作の幅が広がってほしいという期待がありました。

 

 

我々の5年の実績の中で出会った作家さんたちの活動とともに紹介することで、koginbank の活動と、ワークショップを通じてこぎん布の特徴や菱刺しとこぎん刺しの違いを知ってもらう場にして、多くの手芸ファンの中で今のこぎん刺しや菱刺しはどうとらえられているのかを知りたいという意図もありました。

 

この展示企画にご協力いただいた3人には、この企画ために時別な作品を用意していただきました。

 

 

長岡喜美子さんは、古いたっつけを研究して現代仕様にした制作の初めてのお披露目を我々にゆだねてくださいました。実際に履けるように付加したゆとりの入れ方や、当時のものと同じように肌触りを考えて内側に重ねた古木綿はわざわざ青森から取り寄せるなど、こだわりどころが沢山詰まっていました。

 

たっつけと呼ばれる農作業用のズボン。後ろ側の紺の無地の部分は現代人が履くためにサイズ調整で入った。裾を裏返すと古い浴衣地を重ねて刺し子している。

 

前垂れの配色のパターンに名前があることや、綺麗な前垂れになるために図案が欠かせないこと、思いのほか悩ましい制作ぶりもこの機会に初めて知りました。

 

前垂れには井桁・枡刺し・ミズフキ・ココノマワシという4つの配色パターンがある。上の場合は枡刺し。また、腹部は庄内刺し子に似たくものいがきと呼ばれる刺し子模様が入っている。

 

青森県弘前市の佐藤陽子さんは菱刺しと並ぶならと、とても珍しい偶数目の模様が入った古作のこぎん刺しを預けてくださいました。こぎん刺しは奇数の目数の積み重ねで模様を作るとされていますが、偶数目の刺し子から進化したものと考えられています。そのことがうかがい知れる西こぎんは模様がとても綺麗に入っていました。

 

 

西こぎんの背中にはさかさこぶという魔除けとなる模様が入るのが特徴です。

西こぎんの背面。模様が正方の菱形になっているのも珍しい。

 

この西こぎんは模様だけじゃなく、着物の作りからも当時の生活ぶりが垣間見える貴重な着物でした。冒頭の画像から並んだ東こぎんと比べると、袖の形が違います。東こぎんは袂袖であるのに対し、西こぎんは鉄砲袖。よくよく見ると袂袖だったのを折り込んで鉄砲袖にしていることがわかります。

 

袖の下側にうっすら三角に折り込まれている跡が見えるのがおわかりだろうか。留めの黒糸も見える。

袖の中をのぞくと、たもと袖の折り込みがちゃんとありました。

 

東こぎんの正面。胸の部分の模様が左右で違う。

 

東こぎんは模様の糸目もふっくらしていて、西こぎんの模様の擦れ具合と比べるとそんなに使い込んでいる感じがしませんでした。当時は、こぎんの着物はおろしたては晴れ着として、次第に鉄砲袖にして作業着にと使い方が変わっていくようです。また、この西こぎんの裾は布を2枚重ねて黒糸で刺し子がされていました。これは日常の防寒のためなのでしょう。でも、袂袖を折り込んでいたということは、いつでも晴れの日に使えるようにと、大切に丁寧に着られていたのかもしれません。

 

西こぎんの裾の部分。細かい黒糸のステッチがおわかりだろうか。布を2枚重ねて緻密にステッチを入れている。腕の立つ人は白糸で刺し子をするのだとか。

 

またこれらの着物から現代につながるこぎん刺しとして佐藤陽子さんのタペストリーと三つ豆さんの教室皆さんの作品を展示しました。

 

三つ豆さんの教室の作品は統一感がありながら楽しいところで皆さんの個性が発揮され、1つ1つも素敵だけど、集まるとまた存在感が増す面白い課題の数々。ピンクの盛桜と呼ばれるフレームは地刺しパターンがたくさんある菱刺しでも楽しめそうだという声もありました。
バッグもサイズを統一して素材や模様での違いや実際に使っている様子も垣間見えて、制作の参考になります。昨年koginbankでも紹介させていただいた作品展タイトルの副題〜みんな違ってみんないい〜という想いが、作品を直に見ると一つ一つの手の違いも見えてとてもよく伝わってきました。

 

 

佐藤陽子さんの藍と白の伝統的なスタイルのタペストリーは、白壁に映えて今まで見たことないフレッシュな印象でした。この藍と白の存在が空間の清々しさを演出しているような感じがして、こぎん刺し定番スタイルの魅力を見直す機会になりました。伝統を繋ぎ、これからの時代にこぎん刺しや菱刺しを楽しむヒントが存分に含まれた展示になりました。

 

 

そして、菱刺しとこぎん刺しを刺し比べるワークショップは、どんな人が参加してくださるのかとても楽しみでしたが、経験も年齢も様々に、皆さん楽しんでくださいました。人によって最初の着眼点が違うので、講師の水谷さんがつまづいた時にとっさにフォローする姿と、未経験の小学生の覚えの早さには驚きました。はじめて針を持った経験がこれからの彼女たちの人生を豊かにするツールになってくれたら嬉しいです。

 

 

当初は手芸ファンに向けた企画展示が、世情によりターゲットがこぎん刺しや菱刺しを知る人に絞られてしまいました。場所を変えての開催にこの小さなスペースを選んだのは、ワークショップで手元から視線を上げれば素晴らしい手本の数々がよく見える距離感であり、菱刺しとこぎん刺しの違いを目線を動かすだけで、実物に触れても比較ができる。こぎんや菱刺しを体感できる空間にしたかったのでした。来場くださった方々にそれが伝わったかはわかりませんが、みなさん一つ一つじっくりご覧になり、制作や活動のことも話してくださって、我々にとってとても有意義な機会となりました。ガラス越しに街ゆく人が覗くことができる場所であったことも功を奏し、アパレル・繊維関係、伝統文化に携わる方にもご覧いただけたことも幸いです。

 

はるばるご来場いただいた皆様本当にありがとうございました!

 

 

〜過去の関連記事〜

Pop out of HOBBY SHOW! こぎんと菱刺し展 開催
koginbank編集部 text・photo:石井






 


トピックスの最新記事一覧



 

こぎん情報募集中!!

koginbankでは、こぎん刺しのイベント・教室・グッズ・モドコなどの情報を随時募集しています。
詳しくは、お問い合わせフォームにアクセスしてください。