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こぎん刺しの楽しい!かわいい!を発信 こぎんマガジン

こぎんと過ごす 星野リゾート 界 津軽

2019.06.27


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2ヶ月前、星野リゾート 界 津軽がリニューアルし、客室全室が津軽こぎんの間にというニュースがありました。界 津軽では、2013年からこぎんでの空間づくりをスタートし、2019年4月に全ての客室が津軽こぎんの間となりました。

こぎん刺しが手芸として楽しまれはじめた30〜40年前の古い実用書では、こぎん刺しでつくるホームインテリアを目にしたことがあるのですが、最近のこぎん刺しでつくるインテリアスタイルは見たことがないかもしれない…。そんな訳で、大きな宿泊施設でこぎん刺しがどんな空間を実現できるのか、とても気になり、遥々青森に体験に行ってきました。

 

 

界 津軽の最寄駅はJR奥羽本線大鰐温泉駅。青森市から電車で1時間弱。秋田県との県境にも近く、360度山に囲まれた長閑な町で、温泉とスキー場で知られる町です。個人的には、祖父母が住んでいた町なので、名産の大鰐温泉もやしは祖父母の家で食べる特別な家庭の味でした。

 

」は星野リゾートが全国に展開する温泉旅館ブランド。現代人のライフスタイルにフィットした新しい湯治スタイル「うるはし現代湯治」や、心地よい和にこだわった快適な空間と、ご当地の文化や魅力を味わえる旅の醍醐味が満載の宿です。全国にある「界」ブランドの中でも「界 津軽」は東北では唯一。弘前市の南隣位置する南津軽郡大鰐町に在ります。ここ、大鰐温泉の歴史は800年といわれ、江戸時代は津軽藩の湯治場であり、奥座敷といわれていました。江戸時代の全国温泉番付では、横綱を超えた別格「行司」と称された温泉でもあります。

 

界 津軽ではりんごを浮かべたりんご風呂。今の季節はりんご形をしたヒバの木の香りが清々しいです。

 

全国各地の界の宿では地域の文化を存分に体験できる「ご当地部屋」と「ご当地楽」があり、界 津軽ではご当地部屋としてこぎんの間、ご当地楽としてこぎん刺しの体験があります。

 

こぎん刺しが空間になる

界 津軽のご当地部屋「津軽こぎんの間」に通される前に立ち止まらざるを得ないほどに感動してしまうのは、約60mもの長さがある客室廊下の木漏れ日Koginでした。こぎんの模様が天井から降り注がれます。

 

 

天井から落ちてくるこぎんの光が、壁や床に投影され、こぎん模様に包まれるような不思議な体感を味わいました。夜になるとグッと模様が引き立ちとても幻想的です。

そして、それぞれの客室はこぎん刺しのモドコの名前がつけられ、客室の前には、モドコの灯籠が凛と光っていました。

 

 

モドコとは、こぎん刺しの刺し模様の基本となる菱形のモチーフで、界 津軽では客室40室全てモドコが違います。

 

木漏れ日Koginの廊下を抜け、まずは離れの津軽こぎんの間を拝見させていただきました。2013年、一番最初に津軽こぎんの間になった離れは、雪国には珍しい数寄屋造りの家屋です。

 

 

繊細で伝統的な数奇屋の空間にこぎん刺しをモチーフにしたオブジェが。お庭の新緑とあいまって新鮮な印象を感じました。取材に伺った5月は桜が終わり、新緑とつづじの花が眩しくて気持ちいい時期でした。

 

 

露天風呂へと繋がる障子には、全面にこぎん模様が透かされ、大胆でとても迫力があります。奥の床の間にもこぎんのモドコが散りばめられた藍染めが掛けられていました。

他の部屋も和洋問わず、こぎん模様が違和感なくスタイリッシュにお部屋を演出していました。

 

 

洋室は、壁に描かれたモノトーンのこぎん模様や、天井にはモドコがライトで投影されていたり、和の文化とは思えない不思議な魅力があります。ヨーロッパのモダンインテリアスタイルといった感じがしました。

 

 

和洋室のゆったりしたこの客室の名称は、「花つなぎの間」です。お部屋の障子やインテリアパネルには、そのお部屋の名前になっているモドコがあしらわれています。外の新緑が障子をうっすらと緑に染め、モドコが引き立ちとても綺麗でした。

 

 

こぎん刺しの仕組みを立体的に表現したオブジェには、刺し子だけじゃないこぎん刺しの魅力をうかがい知ることができます。

 

 

浴場にもこぎん模様があしらわれていました。

樹齢2000年の古代檜で作られた浴槽には、りんごの形をしたヒバの木が、良い香りとともにぷかぷか浮かぶ姿が可愛らしく、窓の外の新緑は清々しくてとても気持ちいいお風呂でした。この大きな窓の景色をフレーミングしているのはこぎん模様でした。白に光の陰影でこぎんの模様を見せていてとても綺麗。新緑の景色にも映えますが、冬の雪景色も素晴らしそう。冬も見てみたいです。

 

館内には、こぎんの他にも見逃せないところがあります。

 

 

浴場に通じる廊下に並んだミニねぷたは、界 津軽のためだけにねぷた絵師によって作られた作品。ミニサイズとはいえ、夏のねぷた祭りの実物を目の当たりにしたような迫力がすごいです。

また、客室棟とフロントロビーを繋ぐ「津軽四季の水庭」は広々として心地よく、今の季節だけ楽しめる津軽びいどろのガラスライトがとてもロマンチックでした。

 

 

この水庭は、春夏秋冬で設えが変わり、冬はこの水庭にかまくらが設けられ、こぎんのモドコを透かした灯籠で彩られます。かまくらの中では炬燵で寛げるそうです。冬も楽しそうですね。

 

 

津軽びいどろのこの色合いは、津軽の夏の風物詩ねぷたをイメージした色なのだそう。夕日が映し出してくれるガラスの影がとても綺麗でした。

 

こぎんの楽しみいろいろ

界 津軽では、「ご当地楽」として、津軽三味線の体験とこぎん刺しの体験ができます。この二つの体験は界 津軽のスタッフが自ら習得し、宿泊客に提供しているのですが、こぎん刺しは、界 津軽スタッフの精鋭メンバーが揃う「こぎんラボ」チームが企画し、いろんな形でこぎん刺しの楽しみを提供されています。

 

「思い出こぎん」は刺し子の経験がない方でも簡単に楽しめる紙しおりです。糸の色は青森ならではのネーミングからお好きな色を選べます。

 

 

 

紙しおりに使う糸はりんご、桜、白神など、青森ならではの名前は色選びが楽しくなります。

 

ちょっと面白くなってきたぞと思ったら、お部屋で「こぎん刺し放題」もできます。実際に使う材料や刺し方のブックもセットになっているので、じっくり集中して取り組めます。このキットは季節に応じて内容が変わるのだそうです。この時は5月の新緑の彩りでした。

 

 

もっとこぎん刺しをじっくり堪能したいなら、地元のこぎん刺し作家さんから、直接手ほどきを受けるワークショップもあります。予約制ですが、プロの手ほどきを受けながら、こぎん刺しの地元ならではのお話も聞き、こぎん刺しを深められそう。取材時は、こぎん刺しで作る香り袋を、界 津軽スタッフで、こぎんラボメンバーの廣田さんから特別に教えてもらいました。

 

 

作ったのはりんご模様の香り袋。模様は数種類から選べるのですが、青森といえばりんごです。りんご模様は初めての挑戦でしたが、丸い形が少しずつ出来上がってくると気分が上がります。

 

 

こぎんラボの皆さん、こぎんに熱くて勉強熱心で圧倒されます。こぎんのお話ではすごく盛り上がりました。地域の生活から生まれた歴史あるこぎん刺しを現代的に楽しく、こぎん刺しの刺すことだけじゃない面白さを伝えていけたらと仰っていました。

 

なぜ、こぎんなのか?

津軽にはブナコや津軽塗という工芸もあります。そして秋田との県境に近い大鰐町というロケーションは白神山地も近く、自然資源も豊富です。数多ある地域資源の中で、そもそも、なぜこぎん刺しに着目したのでしょうか。こぎん刺しは格式高い工芸とは違い、伝統工芸だけれど、農民の貧しい日常から生まれた民芸でもあります。グレードの高いサービスを提供する旅館に取り入れようと思った経緯がとても気になりました。

 

眺望が最高で、山の向こうに津軽富士と呼ばれる岩木山が見えました。

 

「こぎん刺しの伝統的な藍と白の色合いがシックで、界 津軽にお越しいただくお客様に、洗練された、落ち着きを感じる和の空間を提供できると感じました。そして何より、山端さんとの出会いが大きかったと思います。」

 

界 津軽スタッフの制服には袖と胸元にこぎん模様があしらわれています。

 

と、お話くださったのは界 津軽の斎藤さんです。界 津軽は2013年からkoginデザイナー・山端家昌さんとのコラボレーションで津軽こぎんの間をはじめとする「津軽こぎんプロジェクト」を進めてきました。

 

「刺し子にとどまらず、デザインを活かして様々な方法で、こぎん刺しを表現できたことで、宿でのこぎん刺しの展開の幅が大きく広がったと感じております。」

 

 

お話を伺って、改めて界 津軽で過ごした1日を振り返ると、こぎん刺しの魅力的なポイントが視覚的にも利用者とのコミュニケーションにも程よく散りばめられていることに気づきます。木漏れ日Koginのような心動かされるデザインが目に飛び込めば、こぎんを知る知らない関係なく、感動とともに会話が弾みます。そして、昔の津軽では、冬の寒さを凌ぐために着物の布目を塞ぐように刺し子を施したのが、こぎん刺しの始まりといわれていますが、こぎん刺しはシンプルで理解しやすいストーリーがある伝統文化であることにも気付かされました。庶民の生活の実用から生まれた用の美だからこそ、理解と感動を得られやすいのかもしれません。

 

館内のショップでは素敵な地場工芸品が揃っていました。この白神硝子の箸置きはこぎん模様が綺麗です。

 

手元で作業する針仕事だけじゃない、こぎんのおもしろさが見えてきました。界 津軽の皆さんのお話からずっと感じていた熱っぽさは、宿づくりを通じて、こぎん刺しという文化のポテンシャルを知ったからこそ、こぎん刺しのおもしろくて新しい展開が見えるのかもしれません。まだまだこれからも、界 津軽はこぎん刺しから津軽文化を存分に楽しめる時間を提供していきたいと考えているようです。私たちがまだ気づいていないこぎんの魅力を、どんな形で見せてくれるのかこれからも楽しみです。

こぎんのお話に尽きてしまいましたが、界 津軽はこぎん刺しだけじゃない津軽の文化も存分に楽しめます。津軽三味線の体験では名人に沖縄の三線との違いを教えてもらったり、旅に欠かせない美味しい料理は、こぎん以上に語りたいくらいの感動でした。青森へのこぎんの旅には、必ず立ち寄りたいポイントです。

 

星野リゾート 界 津軽について

星野リゾートが全国15ヶ所で展開する日本初の温泉旅館ブランド「」の一つ。弘前市から電車で10分ほどの、南津軽郡大鰐町にあります。江戸時代は津軽藩の奥座敷であった歴史ある温泉と、津軽の自然や文化を存分に味わえる宿です。

この夏、星野リゾート 界 津軽では、水辺のテラスに青森県の伝統工芸品「津軽びいどろ」で作った約150個の灯りを設え、暗くなると、水庭に浮かぶ船で津軽三味線が生演奏されるそう。迫力ある津軽三味線のパフォーマンスに「ヤーヤードー」の掛け声が加わり、弘前ねぷた祭りの高揚感を味わえます。また、水上には松明の灯がともり、役目を終えたねぷたを炎で清めて送る行事「七日火送り(なぬかびおくり)」のような神聖さも感じられ、津軽の夏の情熱からその終焉の儚さまで、さまざまな情緒や情感が漂います。

そして、ライブラリーでは、昨年の弘前ねぷた祭りで実際に使用した和紙を使い、「うちわ」作りが楽しめます。特製うちわ片手に津軽の夏のひと時を満喫してはいかがでしょうか。

 

 

もう一つ素敵なお楽しみがございます。星野リゾートの温泉旅館ブランド「界」全国の施設では、2019年7月13日~8月31日、「界のご当地かき氷2019」 を開催します。界 津軽では、津軽の夏の風物詩・弘前ねぷた祭りをイメージした「ねぷたかき氷」がふるまわれるそう。ねぷた祭りの華やかさや賑わいを表現したかき氷も是非ご賞味ください。

 

星野リゾート 界 津軽【公式】ウェブサイトはこちら

 

インタビュー:koginbank編集部 text/photo:石井






 


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